アパート経営コラム

〈法律ミニ講座〉「定期借家権」制度を利用する Vol.220
 平成12年3月1日に施行された「定期借家権制度」は、それまでの家主さんの悩みであった入居者の退去問題(退去してもらうには正当事由や立退き料等が必要)を解決し、期限が到来すれば碓実に明渡をしてもらえる制度として設けられました。しかし、期限が到来したら必ず出てもらわなければならないというものではなく、合意で再契約をすることは認められており、再契約を「定期借家契約」とすることも、そうでない「従来型の賃貸借契約」にすることも可能です。このため、家主さんの立場からは、優良な入居者の方には引き続き契約を続けてもらうという選択肢があるのです。
 ただ、家主さんにとっては上記のとおり非常にありがたい制度ですが、入居者からすると再契約できなければ必ず出なければならないこととなり、子育ての間などある程度の長期間賃貸を希望する人にとっては借りにくいという問題はあります。
 以上のような問題はあるものの、家主さんにとって「定期借家権」は利用を検討するだけの価値はあるものと思います。今回は、制度利用の注意点等をご説明します。

(弁護士)
佐瀬正俊氏
1 事前説明と書面化

 あらかじめ「定期借家契約」であること(更新がない契約であること)の書面を作成し、入居者に交付して説明しておく必要があります。これは入居者がこれまでの契約と同じように更新が行われる契約であると誤解しないようにするためのものであり、家主さんに説明の義務があるとされています。このため、仲介業者が重要事項説明書などに書いて説明をしても家主さんが説明したことにはなりません。もちろん、仲介業者が家主さんから委任を受けて代理人としての立場で説明をすることはできますが、仲介業者の義務としての重要事項説明とは区別して行う必要があります。

 なお、説明の書面には最低限、「契約の更新はなく、期間で賃貸借契約は終了すること」と、「契約の終了日」を記載しておくべきでしょうし、後日争いにならないようにこの書面の交付を受けて説明を受けたという確認書も作成して、入居者方に署名と捺印をもらっておくべきだと思います。

 さらに賃貸借契約自体も、書面で行う必要があります。当然のことですが契約の更新がなく、期間満了により終了することを書いておく必要があることはいうまでもありません。また、契約期間については1年未満でもかまいませんし、従来の賃貸住宅の契約のときのように「期間の定めのない契約」とみなされることもありません。

 なお、公正証書が例としてあげられていますが、普通の契約書でも問題はありません。また、契約書のひな型として国土交通省が「定期賃貸住宅標準契約書」という契約モデルを作成していますので、これを参考にするとよいでしょう。)

2 契約期間終了の通知

 前記1.のとおりの手順を踏んで契約書を交わしただけでは、契約期間満了時に明け渡してもらうことはできません。契約期間が1年末満の契約の場合は別として、1年以上の契約の場合は、期日満了の1年前から6ヶ月までの間の通知期間内に、契約が期間満了により終了することを賃借人に通知をしなければ、期間満了日に返還してもらえないことになっています。この「通知」を法律が決めている期間や内容どおりにしたかどうかは重要ですので、法律上は口頭でも構わないのですが、やはり配達証明付きの内容証明郵便で通知すべきでしょう。

 ただ、この通知を法律の決めた期間内に出し忘れても、とにかく通知をすれば、その通知の日から6ヶ月後に期間満了の効果があるものとなりますが、この通知をまったくしなければ期間満了を理由に明渡を求めることはできません。

3 中途解約について

 定期借家契約では、個別の合意がない限りは、原則として当事者は中途解約できないこととなっています。しかし事務所や店舗でない、アパートのような居住用建物で床面積が200平方メートル未満ものの定期借家契約は、入居者の転勤、療養、親族の介護など、賃借人にやむを得ない事情があるときは中途解約ができるとされています。この場合、入居者から解約申入をすれば、その申し入れの日から1ヶ月を経過した日に契約が終了することになります。

 なお、この1ヶ月の期間を契約により、例えば「3ヵ月後に終了」というような定めをしても、それは賃借人に不利な規定ということで無効とされます。

4 再契約時の注意
 最初に述べたとおり、家主さんは再契約をすることができ、その契約方式も、定期借家契約でも、あるいはこれまでのように正当事由よる解約の制限がつく普通の契約でも選択できます。ただし、定期借家契約の方式のときは、再契約前に定期借家契約であることの書面は交付しての説明義務がありますので注意が必要です。
5 その他

 賃料の増減について特約を定めていても、これまでの賃貸借契約では法律の規定が優先し、賃料の増減請求が認められていました。しかし、定期借家契約の期間中に賃料の増減についての合意(例えば一定期間ごとに一定割合で増減するというような合意)があれば、その合意が優先するとされています。

 また、アパートのような場合はあまり必要はないと考えられますが、定期借家契約については民法の20年という期間制限は適用されません。

 また、平成12年3月の施行前からの居住用の建物についての賃貸借契約については、当事者が合意しても定期借家契約に契約し直すことはできませんのでご注意ください。