アパート経営コラム

平成16年度税制改正の要点(その2) Vol.2
前回に引き続き、平成16年度税制改正の要点を解説します。 鴛海量良氏
(公認会計士・税理士)
5 土地建物等の譲渡損失にかかる損益通算の不適用  
改正前は不動産を譲渡した場合に生じた損失(例えば1000万円)について、原則として他の所得(例えば給与所得600万円、不動産所得350万円)から控除できました(この例では600+350-1000=▲50万円)。
また、青色申告者については、損益通算をした後に残った純損失(この例では50万円)について3年間の繰越控除が認められていました。
しかし、今回の改正により次のように不動産の譲渡所得以外との通算が認められなくなり、さらに翌年以降への繰越も認められなくなりました。
1.
土地建物等の譲渡による所得以外の所得との通算及び翌年以降の繰越ができなくなったこと。
2. しかし、土地建物等の譲渡所得内部での通算は可能であること。
3. 他の所得の損失(例えば不動産所得が赤字である場合)と土地建物等の譲渡所得(黒字)との通算もできないこと。
  この改正は平成16年1月1日以後に行った譲渡から適用されます。また、住民税は平成17年度から適用されます。    
6 特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除要件の緩和
この制度は他の所得との損益通算を認めるほか、損益通算してもなお残った損失の繰越控除を認める制度ですが、今回の改正で適用期限が平成18年12月31日まで3年間延長され、また、主な次の要件のうち2の要件が廃止されました。
 
1.
譲渡年の1月1日において所有期間が5年を超える居住用財産の譲渡により生じた損失であること。
2. .譲渡資産(居住用財産)の譲渡契約日の前日において住宅ローンの残高があること。
→平成16年1月1日以降廃止
3. 繰越控除を受けようとする年末において買換資産(居住用財産)に係る住宅ローンの残高を有すること。
4.
繰越控除を受ける年分の合計所得額が3000万円以下であること(譲渡年は超えていても可)。
5. 譲渡の相手方が配偶者及び直系血族などの特殊関係者以外の者であること。
6. 譲渡損失が生じた年分の確定申告書を期限内に提出しており、その後も連続して確定申告書を提出していること。
7. .譲渡損失が生じた年の前年または前々年に「3000万円特別控除」「居住用財産の長期譲渡所得の軽減税率特例」「相続等または特定の居住用財産の買換え・交換の特例」の適用を受けていないこと。
  前述の「5.土地建物等の譲渡損失にかかる損益通算の不適用」の項で延べたように、原則として不動産の譲渡損失の他の所得との損益通算及び損失の繰越控除が認められなくなったため、この制度は次の新設された制度と並んで利用価値がより一層高まりました。
7 新設された買い替えを必要としない制度
特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除の創設上記6の制度は、譲渡資産に住宅ローンが残っている必要がない代りに、住宅ローンを利用した居住用財産の買換えが必要ですが、一方、この制度は、買換えを行う必要がない代りに譲渡資産には住宅ローンが残っていなければならないのが大きな違いです。
主な要件を上記6の要件に準じて列記すれば次のようになります。
1.
譲渡年の1月1日において所有期間が5年を超える居住用財産の譲渡により生じた損失であること。
2. 譲渡資産(居住用財産)の譲渡契約日の前日において住宅ローンの残高があること。 →この点が6と異なる
3. (この制度は上記6の3の要件は不要、つまり買換えの必要はない)
4.
繰越控除を受ける年分の合計所得金額が3000万円以下であること(譲渡年は超えていても可)。
5. 譲渡の相手方が配偶者及び直系血族などの特殊関係者以外の者であること。
6. 譲渡損失が生じた年分の確定申告書を期限内に提出しており、その後も連続して確定申告書を提出していること。
7. .譲渡損失が生じた年の前年または前々年に「3000万円特別控除」「居住用財産の長期譲渡所得の軽減税率特例」「相続等または特定の居住用財産の買換え・交換の特例」の適用を受けていないこと。
  このように上記6の制度と異なるのは2及び3の要件だけですが、他の所得との損益通算及び損失の3年間繰越控除が可能である点において同じです。
ただし、繰越控除金額の範囲については大きく相違します。つまり、譲渡損失が生じた年に他の所得との損益通算をしてもなお残った損失金額は、上記6においては損失金額すべてが繰越控除の対象となるのですが、この制度は譲渡資産の住宅ローン残高から譲渡対価を控除した金額が上限とされているのです。
【計算例1】 居住用財産の譲渡損失が2000万円、住宅ローン残高2500万円、譲渡対価が1200万円、譲渡年の他の所得金額400万円のときは次のように計算されます。
繰越控除損失 900万円
住宅ローン残高 2500万円
他の所得 400万円
譲渡対価 1200万円
1)他の所得との損益通算及び繰越控除の対象となる損失金額の上限=住宅借入残高2500万円−譲渡対価1200万円=1300万円
2)譲渡年の損失=他の所得400万円−譲渡損失2000万円=1600万円
3)損益通算及び繰越控除損失対象額 1)及び2)のいずれか低い方1300万円
4)翌年以降3年間繰越控除対象損失
1)上限額 1300万円
2)譲渡年損益通算額 400万円 3)差引 繰越控除損失 900万円
【計算例2】 上記計算例1において住宅ローン残高を1000万円とします。この場合は住宅借入残高1000万円<譲渡対価1200万円なので、譲渡損失がいくらあろうとも損益通算はもちろん繰越控除損失もありえないことになります。
すなわち、譲渡損失金額の大小を問わず、譲渡対価でもって住宅ローン残高を全額支払うことが出来るのであれば、この制度は利用出来ないということになります。
8 その他の改正
1.所有期間10年超の特定の事業用資産の買換えの課税の特例
詳細は省きますが、次の特例についてはその適用期限が平成18年12月31日まで3年間延長されました。
【譲渡資産】 国内にある土地、建物又は構築物等で譲渡年の1月1日現在における所有期間が10年超のもの
【買換資産】 国内にある土地、建物、構築物又は機械装置譲渡資産、買換資産いずれも事業の用に供している資産に限ります。
2.青色申告特別控除の引上げ
事業所得、不動産所得(不動産貸付業については事業的規模のものに限る)を生ずべき個人が、税務署長の承認を得て、正規の簿記の原則にしたがって取引きを記帳している場合は、青色申告特別控除の適用がありますが、次のように改正されました。
  改正前
改正後 
1)正規の簿記原則により記録している者 55万円
65万円
2)簡易な簿記により記録している者(経過措置) 45万円 ――
3)上記以外の者 10万円  10万円
上記改正については平成17年分以降の所得税及び平成18年度以後の個人住民税について適用されますが、(2)の適用は平成16年分(個人住民税は平成17年度)までで、平成17年分以後は廃止されます。
平成17年分以降の消費税の免税点改正(3000万円以下→1000万円以下)と簡易課税制度改正(2億円以下→5000万円以下)により、個人事業者に対しても複式簿記による帳簿記録を勧奨していく傾向にあると思われます。